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研究所だより
坂林 哲雄(協同総合研究所)
労協組合員の学びや成長といったことはどうなっているのか。2月に行われた日本労協連の主催の「全国事業推進会議」で奈良第2事業所のすばらしい取り組みを聞くことができた。現場で働く組合員の言葉を紹介しておきたいと思います。「所長に走らされるのが悔しくて、みんな自律してきたのかもしれない。最終責任は所長だが、みんなで責任を分担している。担当する現場の美観は自分で責任を持つ。きれい、汚いは自分で判断する。何をしなければならないか。清掃方法を選択するのも自分の判断である。人の意見ではない。その結果起きた現象にも責任を持つ。それでも対処できない時は所長が責任をとる。判断する。そういった意識が育っていった。誰もが自分の納得できる仕事がしたいと考えるようになった」「以前、『サービスマスター』の話を聞いた時に、これは雲の上の話やと思っていた。(サービスマスターはアメリカの会社)でも、今は決してそうは思わない。トータルに衛生環境という問題に対してものを言う集団になれると思えるようになった。県下の上位30の病院にアタックしている。公立病院もある。○○大学病院が一番の高度医療を行っているのだが、この物件を狙っている。ここで認められる仕事が目標だ」――これは労協が推進している新清掃方式を導入した経験報告からの引用だが、仕事に対する自信に満ち満ちている。詳しくは労協新聞(2月25日)を読んでいただきたい。
2月15日に「環境ビジネスの可能性をさぐる」という研究会を行った。講師は中村修さん(長崎大学)。内容は来月号に掲載予定。内容とは別に印象に残ったこと。「大学の研究費では十分な調査研究ができないので、行政と組んで必要な援助を得て、地域にとって良い仕組を提案している」「学生も簿記やコンピューターが使えるのは当たり前、この調査を通じてアルバイトをし、ゼミを卒業したら『環境』のプロとしてやっていける人材を育てる」
これまでも言ってきたことだが「研究所の自立」と、「コミュニティ福祉のプロを養成する大学の役割」といったことを考えた。
研究所の現状の活動を継続する場合の物件費は約1500万円である。これに人件費が加算される。今のところ会費収入がおよそ600万円で、残りは労協連からの補助に頼っている。ベーシックな部分の活動を継続するためには、人件費を含め2500万円。およそ2000人の会員がいないと成り立たない。研究所の当面の目標が一つここにある。後者については、労協連の「地域福祉事業所」の活動を、自らの研究課題としながら応援してくれる研究者、学生を求めている。
本紙掲載の「聞き取り調査」を通じて印象的だったのは、キュービックの内井さんやセキタクシーの高野さんが言っていた言葉である。つまり、「形式が労働者協同組合の原則を曖昧にする」という言葉である。法律がないから「取り敢えずいいじゃないか」「現状ではしょうがないじゃないか」と、安易に考えがちであった形式を、実践の現場では意外に厳しく見ていることである。弥縫策は通用しない。正面から雇われない労働者による組織を認める法を成立させなければと、襟を正した次第である。
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